新型コロナウイルス感染症〔しんがたころなういるすかんせんしょう〕

 新型コロナウイルス感染症(コロナウイルス感染症2019:COVID-19)はSARS コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染によって起きる急性呼吸器症候群です。2019 年 12 月、中国武漢市において確認されて以降、世界にひろがりパンデミックを起こしています。
 感染経路は飛沫感染、閉鎖空間でのエアロゾル(飛沫よりさらに小さな水分を含んだ状態の粒子)感染、接触感染で、特に、密閉・密集・密接(三密)の空間での感染拡大が問題とされています。潜伏期間は当初1~14 日(多くは5~6日)とされていましたが、2021年12月ころから世界的に増加し、現在流行の中心となっている変異株のオミクロン株では2~3日と短くなっています。
 おもな症状は、発熱、せき、咽頭痛、全身倦怠(けんたい)感等の感冒様症状であり、頭痛、下痢、結膜炎、嗅覚(きゅうかく)障害、味覚障害等を呈する場合もあります。通常は1週間程度の経過で軽快しますが、一部は肺炎を併発し重症化することが知られています。特に高齢者および肥満、糖尿病などの基礎疾患のある人においては重症化するリスクが一定程度あるので、注意が必要です。
 治療には、解熱薬、鎮咳薬等による対症療法のほか、抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビル、エンシトレルビル)、中和抗体薬(カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ)、抗炎症薬(デキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブ)の投与がおこなわれます。呼吸障害を起こした場合には、酸素吸入、人工呼吸管理などがおこなわれます。
 新型コロナワクチンの接種による発症予防、重症化予防が可能であるため、積極的なワクチン接種が推奨されています。現在国内では、体内で免疫を誘導するために必要なたんぱくをつくって投与する遺伝子組み換えたんぱくワクチンと、そのたんぱくをつくるための遺伝情報を投与する遺伝子ワクチン(mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン)が使用されていますが、いずれのワクチンも、有効な免疫を誘導・維持するためには複数回の接種が必要です。ワクチン接種により十分な免疫を得ることがむずかしい血液がんなどの免疫不全状態の人に対しては、中和抗体薬のチキサゲビマブ/シルガビマブの予防投与がおこなわれています。
 上記のように、ワクチンや治療薬の開発により、新型コロナウイルス感染症の流行はコントロールされつつありますが、感染拡大を防ぐためには、できるだけ密閉・密集・密接(三密)を避け、適切なタイミングでの手指衛生、マスク着用などを心掛けることも重要です。
 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけについては、新型インフルエンザ等感染症として二類感染症相当の対応が続けられてきましたが、2023年5月より五類感染症に変更されました。
 新型コロナウイルス感染症の最新情報は、厚生労働省のサイトから閲覧が可能です。

※この項の「新型コロナウイルス感染症」は、病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2〈2020〉年1月に中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る)であるものに限ります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)

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