せき・たん

 せきは、のど、気管、気管支、胸膜のどこかの刺激で出ます。気道に分泌物があると、これを“たん”として吐き出します。せきやたんの原因でもっとも多いのは、かぜです。通常は、十分に休養してからだの抵抗力を強めることで、薬を服用する必要もなくおさまりますが、なかなか治らず長びく場合には、なにか別の感染症が加わったか、もともと肺や心臓などに病気があって治りにくいといった可能性が考えられますので、よく調べてもらう必要があります。たんを伴わないせきのことを“からせき”といい、マイコプラズマ肺炎や血圧降下薬の副作用で生じることがあります。

 たんには種類があり、鼻から下がってくるもの、水のような薄いたん、粘液、膿、血液、異物、腫瘍片を含むものなどいろいろで、たんの検査は病気の正しい診断のためにも重要です。特に、気管支拡張症のときは大量のたんが出ます。副鼻腔(ふくびくう)や扁桃(へんとう)の病気でも、多くのたんが出る場合があります。悪臭のする汚いうみのようなたんが出る場合は、肺膿瘍(のうよう)の可能性があり、病原菌をよく調べる必要があります。
 肺がんの初期症状として、血たんがあります。肺結核や、心臓弁膜症などの心臓病が進んだ時期にもときどき血たんが出ることがあります。最近は少なくなりましたが、寄生虫感染症の肺吸虫症でも、血たんが出ます。

■せき・たん
症状病名そのほかの症状など
発熱を伴う感冒(かぜ症候群)頭痛、だるい、くしゃみ、鼻汁、のどの痛み、吐き気、腹痛
インフルエンザだるい、頭痛、関節痛、鼻汁
急性咽頭炎のどの痛み、血たん
急性喉頭炎のどの痛み、声がれ
急性気管支炎
肺炎疲れやすい、胸痛、食欲がない、息切れ
肺真菌症喀血、呼吸困難
発熱なし気管支ぜんそく息切れ、喘鳴
からせきマイコプラズマ肺炎高熱、若年者に多い
血たん気管支拡張症喀血、大量のたん、慢性のせき
肺がん喀血、胸痛、やせ
肺結核疲れやすい、食欲がない、息切れ、喀血、体重減少、寝汗、微熱
心不全疲れやすい、むくみ、食欲がない、息切れ、冷え
肺吸虫症発熱
多量のたん肺膿瘍口が臭い、発熱
せきに胸痛を伴う肺血栓塞栓症息切れ、血たん
胸膜炎息切れ、発熱、深呼吸やせきに伴う痛み、からせき
子どもに多い喉頭ジフテリア声がかれる、喘鳴、呼吸困難
百日せきけいれん、連続するせき


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹

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