微熱・周期的な発熱 家庭の医学

 興奮したり、激しい運動をしたり、暑い部屋にいたりすると、体温が少し上昇します。女性では、排卵から月経までの間や、妊娠中に体温が高くなります。したがって、これらは病気ではなく、生理的な現象です。

 微熱の出る病気で、特に注意しなければならないのが、せきや息苦しさを生じる新型コロナウイルス(COVID-19)感染症、せきやたんの出る肺結核、やせてくるがんや白血病、リンパ節のはれる悪性リンパ腫、関節痛などを伴う膠原(こうげん)病で、いずれの病気も重篤(じゅうとく)化する可能性があります。膠原病では一般に多様な症状がみられますが、そうした症状が同時にあらわれるとはかぎらず、初期には見のがされやすいものです。
 高齢者では、肺炎や腎盂(じんう)腎炎のような、本来ならば高熱の出る病気であってもあまり熱が上がらず、微熱にとどまる場合があり、注意が必要です。
 微熱だけが症状である場合には、原因が特定できない場合も少なくありません。しかし、かぜのあとなどで、数日たっても微熱が続く場合には、医療機関を受診し、かぜ以外の原因がないか、あきらかにすることが望ましいでしょう。
 熱が、数日間の周期で上がったり下がったりをくり返したり、発熱が波状的(熱があるときとないときをくり返す)にみられたりする場合があります。そうした病気の例として、感染性心内膜炎、悪性リンパ腫、マラリア、膠原病の一部があげられます。また、従来デング熱は主として海外旅行者に限ってみられていましたが、最近では首都圏を中心として国内でも感染者が報告されており、今後も発生・流行するおそれがあります。

 いずれにせよ、発熱を自覚したら体温をくり返し測定して記録しておくと、医師に相談する際に役立ちます。

■微熱・周期的な発熱
症状病名そのほかの症状など
微熱慢性気管支炎脈が速い、たんを伴うせき、労作時の息切れ
肺結核疲れやすい、食欲がない、息切れ、喀血、せき、体重減少、寝汗
膀胱炎頻尿、排尿時痛、血尿、残尿感
白血病歯ぐきからの出血、鼻血、貧血、皮下出血、息切れ
悪性リンパ腫頸部などの無痛性リンパ節腫瘍
慢性関節リウマチ関節のはれと痛み
全身性エリテマトーデス不随意運動、全身の発疹、関節痛、倦怠感、食欲不振
周期的な発熱マラリア脈が速い、海外旅行後
回帰熱海外旅行後
デング熱発疹、頭痛、関節痛


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹