連載・コラム一覧
糖尿病の「A to Z」
増加の一途をたどる患者
糖尿病患者の増加に歯止めがかからない。統計では1997年から増加の一途をたどっている。糖尿病に対する対策は食事・運動・薬物があるが、最近ではさまざまな方法の有効性が報告されている。糖尿病治療の専門家である坂本昌也さんに、病気の実態や最新の治療などについて詳しく解説してもらう。
坂本 昌也(さかもと・まさや)
医師 医学博士
国際医療福祉大学 糖尿病・代謝・内分泌内科教授。1997年、東京慈恵会医科大学を卒業。専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では予防医学の観点から糖尿病患者の研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。「最強の医師団が教える長生きできる方法」、血糖値バイブルなど著書多数。糖尿病治療の啓蒙活動にも力を入れている。
障害を持っても華やかに
連載趣旨と略歴
▼連載趣旨
普段身近に感じないことが多い「聴覚障害者」について、皆さんどのくらい知っていますか?特にわが家の場合、長女が難病ということもあって通院、入院で大変だったことや、コロナ禍でコミュニケーションを取ることが一気に難しくなったことなど、体験談を交えてお話ししていく予定です。こういう人もいるんだなあと知っていただけるだけで、特に大きな配慮がなくても、気に留めていただけるだけで私たちが生きやすくなることを知ってほしいなと思っています。
▼略歴
牧野友香子(まきのゆかこ) 株式会社デフサポ 代表取締役
生まれつき重度の聴覚障害があり、読唇術で相手の言うことを理解する。
幼少期にすごく良いことばの先生に出会えたことでことばを獲得し、幼稚園から中学まで一般校に通い、聴者とともに育つ。
大阪府立天王寺高等学校から神戸大学に進学し、一般採用でソニー株式会社に入社。
人事で7年間勤務。主に労務を担当し、並行してダイバーシティの新卒採用にも携わる。
第1子が50万人に1人の難病かつ障害児だったことをきっかけに、療育や将来の選択肢の少なさを改めて実感し2017年にデフサポを立ち上げ、2018年3月にソニーを退職し、聴覚障害児の支援に専念。デフサポでは聴覚障害児の親への情報提供、ことばの教育、就労支援を中心に実施。
2020年より多くの人に難聴に興味を持ってもらいたい!とYouTubeでデフサポちゃんねるをスタートする。
デフサポちゃんねる:https://www.youtube.com/channel/UChitc-o2VfWz5cgT-rMRIjQ
デフサポHP:https://nannchou.net/
女性アスリートのためのオンラインセミナー
2021年度も健康支援委員会と東大が開催、14テーマの講義を企画
2020年度に続き2021年度も一般社団法人女性アスリート健康支援委員会と東大病院女性診療科・産科は女性アスリートが抱える健康問題を中心に、専門家の講義を視聴できる「女性アスリートのためのオンラインセミナー」を開催する。女性の体や健康について学ぶ「Basic編」、女性アスリート特有の健康問題に特化した「Advance編」に分け、各編7テーマずつ、計14テーマの講義を企画。2020年度開催分20テーマのアーカイブも含め誰でも無料で受講できる。
熱中症と対策
例年以上に注意が必要
今年も熱中症の季節がやってきた。2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やマスクの着用など、例年とは異なる生活を強いられている中、その対策も変わってきそうだ。脱水症や熱中症の専門家である谷口英喜さんに、詳しく解説してもらう。
谷口英喜(たにぐち・ひでき)
麻酔科医師 医学博士
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長兼栄養部部長。1991年、福島県立医科大学医学部を卒業。専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。麻酔科認定指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、東京医療保健大学大学院客員教授、「かくれ脱水」委員会副委員長を併任。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ、ラジオに多数出演。年に1冊のペースで、水電解質、経口補療法に関する著書を出版。2021年は6月に「はじめてとりくむ水電解質管理 上下2巻」を発売予定。
ウェブサイト(https://www.tobu.saiseikai.or.jp/surgical-support/)
足の悩み、一挙解決
全国から患者が殺到するクリニック

「足のクリニック表参道」 院長。2004年埼玉医科大学医学部卒業。同大学病院形成外科で外来医長、フットケアの担当医として勤務。13年東京・表参道に日本では数少ない足専門クリニックを開業。専門医、専門メディカルスタッフによるチームで、足の総合的な治療とケアを行う。
日本下肢救済・足病学会評議員。著書に「元気足の作り方 ― 美と健康のためのセルフケア」(NHK出版)、「外反母趾もラクになる!『足アーチ』のつくり方」(セブン&アイ出版)など。
認知症の人への視線を考える
連載趣旨と略歴
▼連載趣旨
認知症が痴呆と呼ばれていた時代から30年以上にわたり、認知症の本人、家族、支援者の取材を続けてきた。そこで、目撃し確信したのは、認知症の人は周囲が思っている以上に力を持っているということだ。しかし、認知症に対する無知や誤解が本人の力を黙殺し、結果として認知症の人が、より良く生きる可能性を押しつぶしている。無知や誤解は「偏見」につながる。本連載では、さまざまな角度から認知症に対する偏見を取り上げ、認知症の人が生きやすくなるための視線を考えていく。
▼略歴
佐賀由彦(さが・よしひこ) ジャーナリスト
1954年大分県別府市生まれ早稲田大学社会科学部卒業。映像クリエーター。主に、医療・介護専門誌や単行本の編集・執筆、研修用映像の脚本・演出・プロデュースを行ってきた。全国の医療・介護の現場(施設・在宅)を回り、インタビューを重ねながら、当事者たちの喜びや苦悩を含めた医療や介護の生々しい現状とあるべき姿を文章や映像で綴り続けている。
研修医こーたの出来たてクリニック
筆者プロフィル
渡邉昂汰氏(わたなべ・こーた)
初期研修医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。将来は地域医療に従事する予定。
アカウントはこちら @kota_watanabe__
コロナ禍のスキンケア=手洗い、マスクによる肌のトラブル対策
手洗い・マスク着用の仕方アドバイス
新型コロナウイルスの患者の世界的な増加に歯止めがかからず、日本でも感染の「第3波」が本格化している。予防対策の基本が手指の消毒とマスク着用であることには変わらないが、正しいやり方をしないと手の荒れや顔の肌のトラブルを招き、日常生活に影響する恐れもある。皮膚科の専門医の野村有子さんに、消毒とマスクに関するスキンケアについてアドバイスしてもらう。
野村有子(のむら・ゆうこ) 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。
知ってる?総合診療科
何を診る診療科なの?
「総合診療科」という名前を見ることが珍しくなくなってきました。しかし、どのような患者を診る診療科なのか、まだまだ十分に理解されていない、分かりにくい存在だと思います。
現在の医療が専門化、細分化した中で、特定の疾患や臓器に限定することなく、多角的に診断、診療を行う部門と言えます。患者が置かれた環境、成育歴、家族関係を含めた全体像を把握し、全人的な視点で病気を考えるのも特徴の一つ。全人的な視点で病気を考える「家庭医」とも言えます。
今後、重要性が増す総合診療科の現状や役割を東京医科大学臨床教授の平山陽示氏らが詳しく解説します。
よくわかる乳がん最新事情
東京慈恵会医科大の現場から
女性のがん患者で最も多い乳がん。食生活や生活習慣の変化を背景に患者が増え、一生の間に11人に1人が発症する時代になりました。特に40代以降に目立ちますが、20代でかかる人もいます。仕事で働いたり、家庭で子育てしたりしながら闘病している女性も珍しくありません。
しかし、乳がんは5年生存率が比較的高いがんで、治療も日進月歩。治療の基本は手術、薬物療法、放射線療法で、遺伝子レベルでがんの発症・増殖メカニズムの解明が進んだ結果、薬物療法で従来型の抗がん剤に加え、ホルモン療法薬や分子標的療法薬の選択肢も広がっています。
だからこそ、民間療法に惑わされることなく、学会の診療ガイドラインなどが安全性と有効性を認めた標準的な治療方法を知る重要性も増しています。今回の連載は、東京慈恵会医科大学(東京都港区)の附属病院でチーム医療に当たる医師たちが交代で執筆します。乳がんに関する正しい知識と最新情報を得て、理解していただければ幸いです。(了)
依存症と向き合う
久里浜医療センターの「今」
「カジノを含む統合型リゾート実施法」が成立、また多くの著名芸能人が違法薬物使用容疑で昨年逮捕されました。こうした影響もあって、ギャンブル依存症や薬物依存症が注目を集めていますが、古くから知られるアルコールのほかゲームへの依存も深刻化しています。
そんな依存症全般にわたる治療、臨床研究、教育研修など高度専門医療を提供している久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の専門医らが「依存症の今」を分かりやすく解説します。
女子選手のヘルスケアを考える
「Female Athlete Conference 2020」リポート
女性アスリートの健康を守り、その活躍を支えたいと、日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会など5団体でつくる一般社団法人女性アスリート健康支援委員会は健康問題に関する正しい知識と対処法を広める活動を展開している。今年度も2月1日、東京都内で学校の養護教諭や部活の指導者、産婦人科医らを対象にした集会を開き、約320人が集まった。その内容をの4回に分けて報告する。
■「Female Athlete Conference 2020~女子選手のヘルスケアを考える~」■
◇主催 女性アスリート健康支援委員会(共催・時事通信社)
◇開催日 2020年2月1日
◇会場 東京都千代田区の御茶ノ水ソラシティ
【プログラム】
◆開会あいさつ 川原貴・女性アスリート健康支援委員会会長
安達知子・女性アスリート健康支援委員会副会長
◆女性アスリートの医学的諸問題
①「月経周期とコンディショニング」
鈴木なつ未(国立スポーツ科学センター スポーツ研究部)
②「女性アスリート貧血の原因と対策」
川原貴会長
③「スポーツ外傷・障害における性差」
武冨修治(東大医学部付属病院 整形外科教室)
◆月経随伴症状と対策
①「月経随伴症状とは」
中村寛江(東大医学部付属病院 女性アスリート外来)
②「月経随伴症の治療」
百枝幹雄(聖路加国際病院副院長)
③「競技現場における月経対策の事例」
ヨーコ・ゼッターランド(日本スポーツ協会常務理事)
◆女性アスリートの三主徴の予防と治療
①「女性アスリートの三主徴からRED―Sへ」
能瀬さやか(東大医学部付属病院 女性アスリート外来)
②「利用可能エネルギー不足改善に向けての栄養指導」
小清水孝子(大妻女子大教授)
③「摂食障害の早期発見に向けて」
関口邦子(国立スポーツ科学センター スポーツメディカルセンター)
患者会は「今」
病と闘う人たちの声
がんや難病などの疾患とどのように向き合い、生活していけばよいのか-。多くの患者やその家族にとって、医師や看護師から受ける説明で治療や生活上の不安が全て払しょくされるわけではない。
悩みや懸念の解消に向けた交流、相互支援を行っている患者会は、医療現場や制度の改善に向けて見落としてはいけない、治療を受ける側の視点を持つ。そうした患者会の素顔を紹介する。
緩和ケアが延ばす命
病や老いとうまく付き合う
緩和ケアと聞くと、末期のがん患者を対象につらい症状を和らげることをイメージする人が多いと思います。しかし、つらさには身体的な痛みだけでなく、精神的・社会的・スピリチュアルな側面もあります。これらが互いに絡み合っているつらさを和らげ、病気とうまく折り合えるように支援するのが緩和ケアです。
早い段階から苦しみを和らげ、予防し、クオリティー・オブ・ライフ(QPL)を改善すると、死亡リスクが低下して生存期間が延びるとの研究結果も示されています。
病や老いとうまく付き合える社会の構築にもつながる緩和ケア。早期からの緩和ケア専業外来クリニックを開業した緩和医療医の大滝秀一氏がさまざまな最新トピックを紹介します。
「食」の要注意サイン、ありませんか
中高生のスポーツ女子が健康を守るための基礎知識2
成長期の中高生は食事から必要なエネルギーと栄養素をきちんととる必要があります。ところが、スポーツ女子の場合、「強くなりたい」と考え、体重や体形を気にして食事がおろそかになったり、運動量に食事量が追いつかなかったりする選手が珍しくありません。「ご飯を食べない」といった食行動の乱れも目立ちます。
食べること自体に罪悪感を持つ「拒食」状態になったり、その反動で「無茶食い」を止められなくなったりしたら、「摂食障害」と呼ばれる病気で、心身にさまざまな問題が生じます。大切なのは日頃から運動と食事のバランスに注意し、体をエネルギー不足にしないこと。それが貧血や無月経、骨粗しょう症などの予防や改善にも直結します。栄養学が専門の小清水孝子・大妻女子大教授と精神科医の西園マーハ文・明治学院大教授に、「食」の要注意サインを聞きました。(5回連載)
小清水 孝子先生(こしみず・たかこ) 日本女子体育大大学院スポーツ科学専攻修了。国立スポーツ科学センター研究員などを務め、新体操や自転車のナショナルチームの栄養サポートにも携わる。2015年から母校の大妻女子大教授。公認スポーツ栄養士。
西園マーハ文先生(にしぞのまーは・あや) 九州大学医学部卒。英国への留学経験もある精神科医で、東京都精神医学総合研究所勤務、白梅学園大教授などを経て、2019年4月から明治学院大教授。摂食障害の専門家で、一般社団法人日本摂食障害協会理事。
高知大医学部「家庭医道場」
体験から学ぶ地域医療
高知大学医学部家庭医療学講座(阿波谷俊英教授)は、学問や知識ではなく、肌で感じながら地域医療を学ぶ「家庭医道場」を2007年から年2回主催している。
この道場を目的に入学を希望する学生もいるという人気で、阿波谷教授は「まず人々の暮らしがあり、その次に医療がある。地域を愛することが医療人としての第一歩になる」と話す。
5月下旬、高知県東部の馬路村で開かれた1泊2日の道場に密着。40人の医師・看護師を目指す学生が、村人と触れ合いながら真剣に学び、将来について語り合う姿を追った。
きちんと治そう、アトピー性皮膚炎
皮膚科専門医が教える治療とケアの最新知識
皮膚に「かゆみ」のある湿疹が生じ、慢性化するアトピー性皮膚炎。以前は「原因不明の奇妙な皮膚の病気」「アレルギーだから治らない」「体質だから仕方がない」などと言われていましたが、現在は違います。この数年で治療方法は飛躍的に進歩し、基礎研究も進んで病態も解明されつつあります。
皮膚科の専門医として診療経験の豊富な野村皮膚科医院(横浜市)の野村有子院長が最新の知見を交え、アトピー性皮膚炎の原因、治療やケアの方法、日常生活の心得などを分かりやすく解説します。
野村 有子氏(のむら・ゆうこ) 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。(了)
AIに活路、横須賀共済病院の「今」
働き方改革が急務
1日1700人の外来患者が訪れ、三浦半島で中核病院の役割を担う「横須賀共済病院」は、カルテの音声入力などに人工知能(AI)を活用した病院業務の効率化を進めている。救急を全て受け入れるなど多忙を極める医療現場の負担を減らし、働き方改革にもつなげるのが狙いだ。AIの導入、病院改革の道筋を探った。
「がん専門医」の「がん手術」体験記
自身でエコー検査、腫瘍を発見
東大病院で34年間、放射線治療や緩和ケアの診療に携わってきたがん専門医の中川恵一准教授は、文部科学省の「がん教育」の在り方に関する検討会委員などの公職も務めてきました。その中川准教授が自身で膀胱(ぼうこう)のエコー検査をして腫瘍を発見。まさに、青天のへきれきだったと言います。その後に受けた手術の一部始終を体験記です。
月経の悩み、ありませんか
中高生のスポーツ女子が健康を守るための基礎知識
思春期になると、男女とも体に変化が現れ、大人の姿に近づいていきます。女子の場合、初めての月経(初経)を迎える時期は個人差が大きいものの、平均で12歳。それから1~2年たち、月経がほぼ毎月、安定して来るようになります。
15歳になっても初経が来なかったり、月経が3カ月以上止まる「無月経」が続いたりすると、医学的には要注意サイン。スポーツを頑張っている中高生の場合、トレーニングのしすぎや食事による栄養が足りないために、体に必要なエネルギーが不足している恐れがあり、放っておくと健康を損ない、その影響がさまざまな形で尾を引くことがあります。
つらい月経痛などの症状も、産婦人科の先生に相談した方がよい場合があります。聖路加国際病院副院長の産婦人科医、百枝幹雄先生に、健康のバロメーターである月経に関する基礎知識と、スポーツ女子にとっての望ましい対応を聞きました。(3回連載)
百枝 幹雄(ももえだ・みきお) 1984年東大医学部卒。米国の国立衛生研究所に留学した経験もある産婦人科医で、2010年から聖路加国際病院(東京都中央区)女性診療部長を務め、12年から副院長を兼務。日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会など5団体でつくる「女性アスリート健康支援委員会」の理事として、女性アスリートの健康を守るための活動に取り組む。
医学生こーたのひよっ子クリニック
筆者プロフィル
名古屋の医学部に通う6年生。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。最近はまっていることは、Instagramで美味しそうなご飯屋さんを見つけること。
アカウントはこちら @kota_watanabe__
熊本総合病院の軌跡と奇跡
つぶれる病院「No.1」から起死回生
熊本総合病院は1948年に病床数100床の健康保険八代総合病院として開設。2000年には14診療科、344病床にまで拡大した。その後、経営が悪化して次々に医師が辞め、患者数は減少の一途をたどり、熊本県内のつぶれる病院ナンバーワンとまでささやかれた。
06年に病院長に就任した島田信也氏は徹底的な改革を断行し、グループトップの黒字病院に生まれ変わった。新病院は地域のランドマーク的な存在になり、街の活性化にも一役買っている。
その軌跡を辿り、奇跡の要因を探る。
五輪の扉開いた心技体の成長
選手から指導者へ、続く柔の道―福見友子さん
女子柔道48キロ級の全日本で4度、世界選手権でも1度女王になり、ロンドン五輪に出場した福見友子さん。国内で無敵を誇った谷亮子選手を日本人で唯一2度破ったことでも記憶に残る。階級制競技につきものの体重調整に取り組みながら、どのように試行錯誤を重ね、心技体を磨いていったか。指導者の道を歩み、どう選手と向き合っているのか。成長の軌跡を振り返ってもらった。(3回連載)
福見友子さん(ふくみ・ともこ) 1985年、茨城県土浦市生まれ。8歳の時に地元の道場で柔道を始め、中学生から48キロ級の選手として活躍。土浦日大高校2年だった16歳の時と、筑波大4年の21歳の時に、五輪金メダリストの谷亮子選手を破った。
2009年、世界選手権に初出場して初優勝。12年のロンドン五輪には、浅見八瑠奈選手らライバルを制して代表に選ばれ、金メダルを目指し、準決勝で敗れて5位。現在はJR東日本女子柔道部ヘッドコーチで、全日本女子ナショナルチームコーチも務める。結婚、出産して1児の母でもある。
失敗から学んだ女子指導の鍵
元全日本監督、柳本晶一さんのチーム管理術
1964年東京五輪で優勝するなど日本のお家芸といわれた女子バレーボール。90年代から苦戦が目立ち始め、2002年世界選手権で13位と惨敗したが、そんな苦難の時代に監督を任され再建に挑んだのが柳本晶一さんだった。若手を大胆に登用し、ベテランの選手心理を巧みに読みながらのチームづくりは高く評価された。女性スタッフの力も積極的に活用したアイデアマンに、チーム管理術などを聞いた。(3回連載)
柳本 晶一氏(やなぎもと・しょういち) 1951年、大阪市生まれ。大商大付属高を卒業し、70年代にバレーボール日本リーグの新日鉄でセッターとして活躍。76年モントリオール五輪4位。新日鉄やタイの男子ナショナルチーム、日新製鋼で監督を務めたほか、97年から指揮を執った女子の東洋紡でチームを初優勝に導く。
2003年にどん底の状態だった全日本女子の監督を引き受け、04年アテネ五輪と08年北京五輪でともに5位に食い込む。現在、一般社団法人アスリートネットワーク理事長。